クリニックが AI に正しく紹介されるには——患者さんの聞き方、AI が必要とする情報、医療広告規制の線引き
執筆:TriloAI 編集チーム公開:
患者さんは ChatGPT や Google に「近くで夜も診てくれる歯医者」「このクリニックは予約が必要?」と直接聞くようになりました。AI がクリニックを正しく紹介するには、公式サイトと Google ビジネス プロフィールで同じ基本情報を読み取れる必要があります。診療科、医師、診療日と診療時間、予約の方法、場所とアクセス、保険診療と自由診療の費用です。その多くは、医療法第6条の5第3項が広告してよいと定める事項でもあります。最初に取り組むのは、治療の効果を語る記事ではありません。こうした基本情報を漏れなく書き、どこでも同じ内容にすることです。
患者さんが AI に聞くのは、近さ、診療時間、医師、費用のことが中心です
以下は例です。統計ではありません(地名も例です)。OpenAI によると、ChatGPT は関連性の高い地域情報を出すために IP アドレスから推定したおおよその位置を使うことがあり、その位置情報を第三者の検索サービスと共有することもあります(OpenAI ヘルプ「ChatGPT でウェブを検索する」)。大事なのは、AI が見つけた情報の正しさです。
| 知りたいこと | 患者さんの聞き方(例) | AI が答えるのに必要な情報 |
|---|---|---|
| 近くを探す | 「博多駅の近くの皮膚科」「博多区で評判のいい歯医者は?」 | 住所、診療科、最寄り駅やバス停 |
| 診療時間 | 「夜 8 時まで診てくれる小児科」「日曜にやっている耳鼻科」 | 午前・午後・夜の診療時間、休診日、年末年始やお盆の診療 |
| 症状から診療科を探す | 「膝が痛いときは何科に行けばいい?」 | 標榜している診療科と、行っている診療の内容 |
| 予約 | 「予約なしでも診てもらえる?」「ネットで予約できる内科」 | 窓口、電話、ネットそれぞれの予約方法と、予約が必要かどうか |
| 医師を選ぶ | 「女性の先生がいる婦人科」「子どもの歯を診てくれる歯医者」 | 医師の氏名、性別、略歴、担当する診療と曜日 |
| 費用 | 「歯のクリーニングは保険がきく?」「自費のホワイトニングはいくら?」 | 保険医療機関かどうか、自由診療の内容と費用 |
| 特別な希望 | 「車いすで入れるクリニック」「英語が通じる病院」 | バリアフリーの設備、駐車場、対応できる言語 |
症状から何科に行けばよいかを答えるのは AI の役目です。クリニックの側は、標榜している診療科と診療の内容をはっきり書けば足ります。病状の判断までは書きません。「どこがいちばん効くか」という質問に合わせた宣伝文も避けてください。理由は後の医療広告の節で説明します。
AI が必要とする情報の多くは、医療法で広告できる事項と重なります
広告できる事項は法律で決まっています。医療法第6条の5第3項が挙げるのは、診療科名、医院の名称・電話番号・所在地と管理者の氏名、診療日・診療時間・予約診療の有無、設備や従業者に関する事項、診療に従事する医療従事者の氏名・年齢・性別・役職・略歴などです(医療法)。保険医療機関である旨も広告できると、厚生労働省の「医療広告等ガイドライン」(2026 年 3 月 30 日最終改正)は説明しています(ガイドライン本文)。
ウェブサイトには、もう少し書ける余地があります。患者さんが自ら求めて見にくるウェブサイトなどでは、問い合わせ先をはっきり示し、自由診療については通常必要な治療の内容と費用、主なリスクと副作用も載せれば、広告できる事項の限定が外れます(医療法施行規則第1条の9の2)。ただし、広告から入るページは別です。ガイドラインは、バナー広告や、検索サイトに費用を払って上位に表示させたものはこれに当たらないとしています。対応表にすると次のとおりです。
| AI が知りたいこと | 載せる場所 | 書き方 |
|---|---|---|
| 医院名 | 公式サイト、ビジネス プロフィール、看板 | 看板と同じ正式名称を、三か所で一字一句そろえる(名称は医療法第6条の5第3項第3号で広告できる事項) |
| 診療科 | 公式サイト、ビジネス プロフィールのカテゴリ | 広告できる診療科名は政令で決まっている(医療法第6条の6、医療法施行令第3条の2)。たとえば「総合診療科」は、限定解除の要件を満たすウェブサイトを除いて広告できないと、ガイドラインの Q&A は答えている |
| 医師 | 公式サイトの医師紹介ページ | 氏名、略歴、広告できる専門医資格、担当する診療。「県内一」のような比べる言葉は使わない |
| 診療時間 | 公式サイト、ビジネス プロフィール、院内掲示 | 午前・午後・夜を分けて書き、担当医と休診日も示す。三か所とも同じにする(医療法第14条の2は、医師の氏名と診療日・診療時間を院内に掲示するよう定めている) |
| 予約方法 | 公式サイト、ビジネス プロフィールの予約リンク | 窓口、電話、ネットそれぞれの方法と、予約が必要かどうかを一文ずつ |
| 場所とアクセス | 公式サイト、ビジネス プロフィール | 正確な住所、駅の出口やバス停、駐車場、エレベーターやバリアフリーの設備 |
| 保険診療と自由診療 | 公式サイト | 保険医療機関である旨を書く。自由診療は「保険が使えない旨」と標準的な費用(「5 万〜5 万 5 千円」のような幅でもよい)を併記した場合に限って広告できる、とガイドラインは説明している |
| 健康情報の記事 | 公式サイト | 作成日と更新日、参考にした資料を書き添える |
患者さんが使う検索先は AI だけではありません。厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)でも、診療日や診療科目、対応できる治療の内容などから全国の医療機関を探せます。これは医療法第6条の3にもとづく医療機能情報提供制度の検索システムで、医療機関は都道府県に報告した内容が変わったら、速やかに報告し直すことになっています(厚生労働省「医療機能情報提供制度について」)。公式サイト、ビジネス プロフィール、ナビイの三つは内容をそろえます。そうすれば、どこを見た人にも同じ情報が届きます。Google も「重要なコンテンツはテキスト形式で提示」するよう勧めているので(AI 機能とウェブサイト)、診療時間表は画像だけにせず、文字でも載せます。
Google ビジネス プロフィールは医院と医師を分け、診療時間を実態どおりに設定します
Google によると、ローカル検索の結果は主に関連性、距離、知名度で決まり、情報が充実していて正確なほど表示されやすくなります。ランキングを上げるための依頼や金銭は一切受け付けていません(Google のローカル検索結果のランキングを改善するヒント)。項目ごとの入力方法はGoogle ビジネス プロフィールのチェックリストにまとめました。クリニックで特に気をつけたいのは次の点です。
- 名前:看板やウェブサイトで一貫して使っている名称にし、不要な情報は加えません(Google に掲載するビジネス情報のガイドライン)。たとえば「ひまわり歯科 夜間診療・博多駅すぐ」のように、診療時間や駅名を足すことは認められません(医院名は架空の例です)。
- 医師のプロフィール:Google は医師と歯科医師を「個人専門家」に含めています。対外的に診療を行う医師本人で、オーナー確認された事業所で営業時間内に直接連絡が取れるなら、専用のプロフィールを作れます。専門分野ごとに分けて何件も作るのは認められていません。
- 医師が複数いる医院:医院のプロフィールは別に作り、医師のプロフィールの名前には医師名だけを入れて、医院名は入れません。医師が一人だけのブランド名の医院では、Google は一つのプロフィールを共有し、「医院名: 医師名」の形式で名前を付けることを勧めています。
- 診療時間:昼休みをはさむ場合は、同じ曜日に時間帯の異なる 2 つの枠を作ります(営業時間を編集する)。年末年始や臨時休診は特別営業時間で設定します。特別営業時間で設定できる連続した休業は最長 6 日間です。
- 予約リンク:追加できます(ローカル ビジネス リンク)。ただし、予約を最後まで完了できる専用のページにつなぐ必要があり、SNS、メッセージのリンク、短縮 URL は使えません(ビジネスリンクに関するポリシーとガイドライン)。予約が LINE や電話だけなら、その方法を公式サイトに書いておきます。
医療広告の線引きは医療法第6条の5と医療広告等ガイドラインに書かれています
まず定義です。医療広告等ガイドラインは、患者の受診などを誘う意図がある(誘引性)、医師や医院の名前が特定できる(特定性)、医療に関する内容である、の三つを満たせば医療広告に当たるとしています。2017 年の医療法改正で、医療機関のウェブサイトも他の広告と同じく規制の対象になりました(厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」)。公式サイトはもちろん、ビジネス プロフィールや SNS の投稿も、受診を誘う目的で医院名がわかれば、この定義に当てはまり得ます。
規制の対象は医療機関だけではありません。医療法第6条の5第1項は「何人も」と定めており、ガイドラインは広告代理店、アフィリエイター、患者や一般の人も対象になると説明しています。
禁止されている広告は六種類です。虚偽の広告(第1項)、他の医院より優れていると示す比較優良広告、誇大広告、公序良俗に反する広告(第2項)、そして患者の体験談と、誤認させるおそれのある治療前後の写真です(医療法施行規則第1条の9)。ガイドラインと Q&A から、ウェブでの宣伝に関わりの深いものを表にしました(ガイドライン本文、Q&A)。
| こう書くと | 当たる規定(ガイドラインの説明) |
|---|---|
| 「日本一」「No.1」「最高の医療」「県内一の医師数を誇ります」 | 比較優良広告(医療法第6条の5第2項第1号)。最上級の表現は、客観的な事実であっても禁止 |
| 「絶対安全な手術です」「どんな症例でも必ず成功します」 | 虚偽広告(同条第1項)。医学上あり得ない表現として扱われる |
| 患者さんの感想や体験談を載せる | 体験談の広告の禁止(施行規則第1条の9第1号)。内容が広告できる範囲でも認められない |
| 治療前後の写真だけを載せる | 誤認させるおそれのある治療前後の写真の禁止(同条第2号)。通常必要な治療内容、費用、主なリスク・副作用などの詳しい説明を付ければこれには当たらないが、限定解除の要件を満たさない広告にはそもそも載せられない。治療前だけ、治療後だけの写真も同じ扱い(Q&A Q2-8) |
| 「今なら〇円でキャンペーン実施中」「期間限定で 50% オフ」 | 費用を強調した広告。ガイドラインは「品位を損ねる内容の広告」として厳に慎むべきものとしている |
| 自由診療を、メニュー名と最低価格だけで紹介する | 限定解除の要件(施行規則第1条の9の2)を満たさない。通常必要な治療の内容、標準的な費用、治療期間と回数、主なリスクと副作用を載せる |
| 「著名人も当院で治療を受けています」 | 著名人との関係を強調する表現は、比較優良広告として扱う |
罰則もあります。虚偽広告は、医療法第87条により 6 か月以下の拘禁刑または 30 万円以下の罰金の対象です。そのほかの違反については、都道府県知事や保健所を設置する市の市長などが報告を命じたり立入検査をしたりでき、広告の中止や内容の是正を命じることもできます(第6条の8)。この命令に従わない場合も、第87条の罰則の対象です(医療法)。悪質な場合には、管理者の変更命令や、開設許可の取消し、閉鎖命令も考えるべきだとガイドラインは述べています。
以上は要点にすぎません。条文とガイドラインをまとめたもので、個別の判断ではありません。ある投稿が広告に当たるか、違反しているかを判断するのは都道府県などの行政です。迷ったときは、所在地の保健所の医療法担当や、厚生労働省のページに一覧がある医療広告の相談窓口、医療法に詳しい弁護士に確認してください。美容医療の違法な例は、厚生労働省の通知「美容医療に関する取扱いについて」(2025 年 8 月 15 日)にもまとめられています。
クチコミへの返信では、患者さんの病状や受診の事実に触れません
クチコミを書くのは患者さんです。返信を書くのは医院です。責任の重さが違います。刑法第134条は、医師などが正当な理由なく、業務上知った人の秘密を漏らすことを罰しています。個人情報保護法は、病歴を特に慎重な扱いが必要な「要配慮個人情報」と定め(第2条第3項)、本人の同意なく個人データを第三者に渡すことを原則として禁じています(第27条)(刑法、個人情報保護法)。
Google のルールも同じ方向です。マップのポリシーは本人の同意のない個人情報の投稿を禁じ、医療情報を含む個人を特定できる情報を例に挙げています(禁止または制限されているコンテンツ)。クチコミへの返信についても、投稿者の個人情報を公開せず、メールや電話で直接連絡してもらうよう勧めています(クチコミを増やすためのヒント)。なお医療広告等ガイドラインの Q&A によると、患者さんが口コミサイトなどに自分で書いた体験談は、医療機関が費用を負担して依頼するなどの誘引がなければ、広告には当たりません(Q2-11)。具体的には、次のように対応します。
- 返信には、どんな治療を受けたか、いつ来院したかを書きません。投稿者が自分で病状を書いていても、返信で補足したり確認したりしないのが安全です。
- 否定的なクチコミには、まず個別に話を聞きます。たとえば「ご意見ありがとうございます。詳しくお話を伺いたいので、お手数ですが医院の電話で事務スタッフまでご連絡ください」と返します。
- クチコミは、受付に同じ QR コードを置くなど、すべての患者さんに同じ方法でお願いします。満足していそうな人だけに頼むこと、その場で書くよう求めること、特定の内容を入れるよう頼むこと、割引やプレゼントと引き換えにすることは、Google が禁止しています。ステルスマーケティング規制との関係は日本のお店が AI に推薦されるための整え方で説明しています。
この順番で、まず基本情報をそろえてから中身に進みます
- 基本情報の一覧表を作ります。正式名称、住所、電話番号、診療科名、医師の情報、曜日ごとの診療時間、予約方法を一枚にまとめ、すべての場所をこの表から入力します。
- 医療情報ネット(ナビイ)で自院の情報を確認します。都道府県に報告した内容に変わった点があれば、報告し直します。
- 公式サイトに、診療時間のページと医師ごとの紹介を作ります。略歴、広告できる専門医資格、担当する診療、担当する曜日を文字で書きます。
- ビジネス プロフィールを整えます。正式名称、いちばん具体的なメインカテゴリ、昼休みをはさむ診療時間(同じ曜日に 2 枠)を設定し、年末年始やお盆の前に特別営業時間を入れます。
- 予約の入口を決めます。ネット予約のページがあれば、ビジネス プロフィールの予約リンクに入れます。LINE や電話だけなら、公式サイトに方法を書きます。
- 保険診療と自由診療を分けて載せます。自由診療は、保険が使えない旨、標準的な費用、主なリスクと副作用を同じページに書き、キャンペーン価格や割引は強調しません。
- 言葉を見直します。公式サイト、ビジネス プロフィール、SNS から、「日本一」「No.1」「最高」「絶対安全」といった表現、患者さんの体験談、説明のない治療前後の写真を削除します。
- 最後は構造化データです。サイトの制作会社に、ローカル ビジネスの構造化データを入れてもらいます。種類は schema.org の MedicalClinic や Dentist のように、できるだけ具体的なものを選び、内容はページの文字と一致させます(Google の説明)。詳しい書き方はサイトの技術チェックリストにあります。
AI の確認では言及と引用を分け、サービスごとに記録します
患者さんが聞きそうで、医院名を含まない質問をいくつか用意し、ChatGPT、Gemini、Google でそれぞれ聞きます。記録するのは三つです。医院名が出たか(言及)、公式サイトが情報源として示されたか(引用)、診療時間や診療科に誤りがないか、です。回答は聞くたびに変わります。当社が同じ 14 問をもう一度聞いたところ、言及率は 31.5% と 41.7% に分かれました。だから何回か聞いた幅で見ます(計測方法)。手順はお客様が AI に「近くのおすすめ」を聞いたとき、お店が候補に入るにはで紹介しています。
よくある質問
公式サイトに医師の得意分野を書いてもいいですか?
確かめられる事実なら書けます。医療法第6条の5第3項第9号は、医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴などを広告できる事項としています。専門医の資格は、日本専門医機構などの認定のうち厚生労働省が示した範囲のものなら広告できると、ガイドラインの Q&A は答えています(Q3-5)。「県内一」のように他と比べる言葉は、比較優良広告に当たります。具体的な線引きは所在地の保健所に確認してください。
Google のクチコミを公式サイトに載せてもいいですか?
載せないでください。ガイドラインは、医療機関が自らのウェブサイトなどに載せる治療の内容や効果についての体験談は広告に当たり、そのうえで医療法施行規則第1条の9第1号により禁止されるとしています。Q&A も、医院に都合のよい感想を選んで載せることは虚偽・誇大に当たると答えています(Q2-9)。クチコミには患者さんの健康に関する情報が含まれていることも多く、その点でも避けたほうが安全です。
美容クリニックとエステサロンは同じ書き方でいいですか?
違います。美容クリニックは医療機関なので、医療広告の規制がかかります。自由診療の費用とリスクの説明、治療前後の写真、体験談の扱いは上の表のとおりです。一方、エステサロンは医療を行えません。厚生労働省の通知は、レーザーなどで毛根を破壊する脱毛、アートメイク、HIFU の施術などを、医師免許のない人が業として行えば医師法第17条違反になる例として挙げています。美容業の書き方は美容室・サロンが AI に推薦されるにはをご覧ください。
サイトや SNS の運用を制作会社に任せています。問題が起きたら誰の責任ですか?
任せても、医院の責任はなくなりません。医療広告の規制は「何人も」が対象で、ガイドラインは広告代理店なども、依頼した医院とともに指導の対象になり得るとしています。そのうえで、中止命令や是正命令の宛先は、診療所の場合は開設者または管理者です。公開する前に、すべての投稿を医院が自分で確認してください。
次の一歩は、基本情報の一覧表づくりです。公式サイトとビジネス プロフィールを、その表のとおりにそろえてください。ChatGPT が公式サイトを読み取れているかを知りたい場合は、無料クイックスキャンが使えます。対象は ChatGPT のみで、登録は要らず、約 1〜2 分で、サイトを AI が読み取れるかのチェックと、ChatGPT での 2 問のリアルタイム実測を行います。